研究概要 |
環境ホルモン様物質として約70種類の化学物質(農薬、有機化学物質、重金属等)が指摘されているが、その作用性(作用メカニズムや生態撹乱現象)についても不明の部分が多い。環境ホルモン自体についても、その特定と確認の緒についたばかりといえる、今後も多くの化学物質が指摘される可能性もある。したがってこれらの汚濁の現状と汚濁を想定した環境防御に関する基礎的研究は重要な課題である。主な研究成果は次のようである。 1)特に未利用植物の有効活用法を検討すべく、フィールド調査および曝露実験による基礎研究を進めている。先に数種類の植物体の選抜実験により、有害金属と界面活性剤の共存時における水中Al,Ni,Cd,Hg等の収奪力の大きい植物(シュロガヤツリ、ホテイアオイ等)を選抜し、製紙原料等への後利用も考慮して密植が可能でバイオマスも大きいシュロガヤツリが有効である事を確認した(S.Muramotoal.2000,Bull.Environ.Contam.Toxicology,64:122-129)。 他にシナノキ科の黄麻子などの繊維作物も穀物袋などへの原料としても考えられる。 2)同時に植物幼苗において環境ホルモン様物質のBenomyl, Atrazineの汚濁水に対して、シソ科(Ocimum basilicum)、アブラナ科(Var.botortis)、キク科(Chrisanthmum)、シナノキ科(Carchorus calacularis)の植物の水面栽培によって金属ほどの効果ではないが水中濃度が低下し、植物活用による環境インパクトの軽減および未然防止の水際作戦の可能性が見い出された。また水中への陰イオン界面活性剤(農薬、洗剤にも含まれる)共存時の複合影響も検討した。 3)また汚濁水域における生態系への影響を把握するために、アルミニウムと界面活性剤の共存による水生生物への影響も検討した結果、鰓のみならず脳組織への移行も促進される傾向を見出した。 これらの結果から、環境ホルモン様物質は水域内で様々な作用に関与し影響を及ぼすことが示唆されるが、今後、多くの植物の有効性を検討し水域における混合植栽のシステムを構築し、植物活用による環境水の保全の方策を確立したい。なお、植物に吸収された環境ホルモン様物質の植物代謝産物としての化学成分に関する研究も今後の課題である。
|