研究概要 |
ベロ毒素の作用機構に基づき、その阻害剤として期待される28SrRNA中のGAGAテトラループ構造を含む化学修飾RNAを合成し,阻害剤および検出プローブとしての評価を行った。この化学修飾RNA中のベロ毒素作用部位である4324番目に当たるアデニン部位には酸触媒条件下でも脱プリン反応をおこさないアデノシンアナログを導入した。構造を最適化した結果得られた16量体ステムループ構造を有するリン酸部分とリボース部分を化学修飾したDNA体、チオ-DNA体、2'-OMe体の3種のアナログについて速度論パラメータを測定した。その結果、DNA体、チオ-DNA体や2'-OMe体でも毒素への取り込み,N-グリコシル化が起こることが示された。また、チオ-DNAでは分解が非常に遅いこと、RNAに近い構造を取ると予想される2'-OMe体では取り込みの親和性が低いことなどが分かった。一方、DNA体は毒素への親和性が高く、阻害剤の構造としてはむしろ適していることが示された。さらに,これらの誘導体についてはリボソーム存在下でのPAP阻害定数Kiを測定した。その結果、DNA体の阻害定数が最も小さく、最も低い濃度で阻害効果を発揮することが示された。 ベロ毒素に結合する28SrRNAアナログ構造が最適化されたことで、基本骨格が特定できた。また、DNA体、2'-OMe体、チオ-DNA体も毒素の基質になりうることは、それらの化学的な安定性や化学合成の容易さを考える上で大きな利点である。特に、チオ-DNA体は細胞内で安定で、医薬としても有望である。今後,検出装置の開発(高感度化、迅速化、小型化)、その検出試薬の製品化、医薬への応用、除菌フィルターなど高分子素材としての応用など、今回の基礎デーダをもとに広く可能性を求めたい。
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