研究概要 |
ホウレンソウより、酸素発生能を十分保持した光化学系II複合体をイオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィーにより単離精製した。得られた光化学系II複合体の酸素発生能は単離精製に用いた界面活性剤に大きく影響し、最も高い酸素発生能を保持した光化学系II複合体はドデシルマルトシドで可溶化したものであった。この標品にチラコイド膜より単離した脂質(主にMGDG, DGDG)を加え、自作の界面活性剤除去装置(結晶化溶液中に少量のバイオビーズを自動的に徐々に添加する装置)を用いて二次元結晶化を試みたところ、二次元結晶が得られた。しかし、その大きさは最大で200nm平方程度であり、高分解能での解析に耐える大きさではなかった。好熱性らん藻より単離精製した光化学系II複合体の二次元結晶化を種々の条件下で試みたところ、二次元結晶は得られなかったが、高いタンパク質濃度の場合に三次元結晶が得られた。最大約30マイクロメートルの濃緑色菱形状の結晶であり、偏光も観察された。また、ホウレンソウ由来の光化学系II複合体(CP47,D1,D2,cyt.b559,psbI蛋白)をイオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィーにより高純度で単離精製し、種々の脂質を加えて二次元結晶化を試みたが、これまでに得られている結晶よりも大きく結晶性の良い物は得られなかった。現在結晶化条件を探索している。 光化学系II複合体(CP47,D1,D2,cyt.b559,psbI蛋白)二次元結晶の表面形状を原子間力顕微鏡で観察したところ、本系II複合体は膜面からルーメン側に2nm、ストロマ側に1nm程度突出していることや脂質二重層の厚みが3.5nmであることなどが明らかになった。また、酸素発生能を保持した光化学系II複合体の単一粒子の電顕像を画像解析することによって、本粒子の三次元構造が分解能22Åで解かれ、ホモダイマー構造であることや膜面から突出している部分の立体構造に関する情報が得られた。
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