研究概要 |
研究成果 脊椎動物の心臓・内臓などの左右非対称性は,その発生過程の中で形成される。その中心的役割をしている分子の中にshh、Pitx2、レチノイン酸があり、それぞれが胚体の左側だけで作用することにより、左右非対称性を形成することを明らかにした。とくに個々の相互関係、とくに哺乳類の左右非対称形成におけるshh遺伝子の必須の役割を示した。また、PitX2遺伝子を初めて魚類から単離し、その発現解析を行い、その発現がレチノイン酸によって調節されていることも見出した(Tsukui et al.,1999)。 また、一方で、脊椎動物のさまざまな形を作る、いわゆる形態形成に深く関わる転写因子群として知られるT-box遺伝子群の網羅的な単離・および機能解析を行った。魚類胚から数種類のT-box遺伝子を単離しそれらの遺伝子発現解析を行う(Yonei-Tamura et al.,1999;Tamura et al.,1999)とともに、Tbx5/4遺伝子に関してはニワトリ胚形態形成における機能解析を行った(Rodriguez-Esteban et al.,1999)。 また、ヒラメ胚を用いた左右非対称性形成の研究に着手した。ヒラメとカレイを識別する表現系が視交差の交差状態にあることがわかっており、これを指標にヒラメとカレイの左右差の発生学的かつ分子生物学的アプローチによる解析を開始した。まず、視交差が形成される発生初期の段階でヒラメの視神経形成の左右非対称性がある可能性を強く示唆するものであり、分子生物学的なアプローチをするために、ヒラメ胚から左右非対称性形成に関わるいくつかの遺伝子をPCR法により得た。Pitx2、fgf8、Nodal、msx(2)の遺伝子断片を得た。 これらの左右非対称性形成の分子メカニズムに関する成果は、総説としてまとめた(Tamura et al.,1999)。
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