研究概要 |
各種動物の精子は卵外被に含まれる化学物質の刺激を受けると、精子先端にある先体胞の開口分泌を起こし、卵との接触・結合・膜融合にそなえる。大部分の動物種の先体反応は微細な形態的変化で、精子はこの時期激しく運動をしており、検出するためには固定をし、光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で観察するしかない。それゆえ、先体反応の情報伝達などの研究は大きな制約を受けてきた。我々は、蛍光色素、octadecanoyl-aminofluorescein,で細胞膜表面を過剰染色しておき、開口分泌を誘起させると蛍光強度が増大することを利用して、ウニ精子の先体反応を生きた状態で検出することを試みた。その結果:(1)卵ゼリーで先体反応を誘起した後、経時的に固定し、走査電子顕微鏡観察した先体反応率と、蛍光の増大がよい直線関係を持つことを確かめた。一部の測定においては、ゼリー添加後もゆっくりとした蛍光増大を示すが、これは精子調製時に細胞膜を傷つけ、そこから滲入した色素がミトコンドリアなど細胞内器官を染色することによるartifactであることを示唆する結果を得ている。 (2)この蛍光増大は、Ca^<2+>channel blocker, nifedipine, K^+ channel blocker, TEA, high K^+mediaで有意に減少し、この蛍光の増大が先体反応を反映していることを確認するとともに、情報伝達にこれらのchannelが関与していることを追認した。 (3)pHiおよび[Ca^<2+>]iはAF-18,の蛍光増大に先行しており、これらイオンが情報伝達に関与していることを示唆した。 (4)cAMP合成阻害剤SQ22536およびcGMP合成阻害剤LY83583は高濃度で蛍光の増大を減少させ、これらの酵素が情報伝達に関与していることを示唆した。
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