研究概要 |
私はこれまでに、シナプシンの三次元構造及びシナプシンの二量体形成を明らかにし、シナプシンがATPase(ATP加水分解酵素)として機能する可能性を示唆した。そこで本研究では、1.シナプシンのヘテロ二量体形成、2.シナプシンのリン酸化、3.末梢組織におけるシナプシンの役割を検討し、シナプス小胞の開口放出のメカニズムを解明することを目的とした。 1.シナプシンのヘテロ二量体形成の検討 シナプシンIのCドメイン三次構造解析から、シナプシンはホモ二量体を形成することが確認された。そこで各シナプシン間でのヘテロ二量体形成の可能性を検討した。その結果、シナプシンI、IIおよびシナプシンII、IIIのヘテロ二量体形成が確認されたが、シナプシンI、III二量体は検出されなかった。 2.シナプシンのリン酸化について シナプシンには5種類のアイソフォーム(Ia,Ib,IIa,IIb,IIIa)が知られ、相互にCドメイン部分に高い相同性を持つ。各シナプシン分子のN-末端には、Protein Kinase A(PKA)によってリン酸化される部位が存在するが、その役割は不明であった。本研究で、この部位がPKAによってリン酸化されると、リン酸化シナプシンはシナプス小胞から遊離することを明らかにした。 3.末梢組織におけるシナプシンの役割 シナプシンは神経細胞のシナプス小胞上だけでなく、末梢組織の知覚神経にも局在が認められる。しかしながら、末梢組織におけるシナプシンの機能は不明である。本研究ではシナプシンが局在する腎臓部の知覚神経末梢に注目して、免疫抑制活性および二次性高血圧症を引き起こす薬剤として知られているサイクロスポリンA(CsA)を用いてシナプシンの機能解析を試みた。本研究で、CsAに引き起こされた急性高血圧症のメカニズムおよび、シナプシンが二次性高血圧治療のターゲット因子に成り得ることを示唆した。
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