配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1999年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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研究概要 |
海馬では、成体になっても例外的にニューロン(顆粒細胞)の新生が続いている。したがって,この新生した顆粒細胞が,軸索(苔状線維)を発達させ,標的(錐体細胞)の樹状突起とシナプスを形成し、成体の海馬に新しい神経回路を付加していると考えられる。私は,以前に行った神経細胞接着分子(NCAM)のノックアウトマウスの解析結果から、このような苔状線維と錐体細胞のシナプス形成時には、神経一筋で見られるような,神経支配の再構成が起こる、との仮説を立てた。本研究では,この仮説を証明する目的で、まず,正常マウス・ラットとMCAMノックアウトマウスの苔状線維の発達を,蛍光色素DiIと共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、正常な動物では,生後645日目に、錐体細胞層内に多数の苔状線維側枝が見られたが,1・2ヶ月令では,ごく少数の側枝しか見られなかった。また,側枝に存在する大小のボタンにはシナプスが見られた。これに対し,MCAMノックアウトマウスでは,2ヶ月令でも,錐体細胞層内に側枝が残存し,シナプスボタンが錐体細胞の細胞体と非シナプス性の細胞接着構造を形成していた。つぎに,生きている状態で,苔状線維側枝を観察する目的で,海馬切片培養法を用いて,苔状線維側枝を観察した。その結果,錐体細胞層側に伸びた苔状線維側枝が,伸長又は退縮する様子を観察できた。この場合,側枝上に存在するボタンが移動することも明らかになった。以上の観察結果から次のようなことが推測される。苔状線維の発達時期には,時的に側枝が錐体細胞層に侵入し,シナプスボタンを形成する。しかしそのシナプスボタンの結合は永久的なものではなく,おそらくある程度変化する。その後,苔状線維側枝は退縮するが,この時にはシナプスボタンも消失する。また,このような苔状練維の退縮過程には,NCAMが関与することが考えられる。
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