研究概要 |
本研究では遊走性の筋芽細胞で特異的的に発現しているLbx1ホメオボックス遺伝子を筋組織原基内の本来本遺伝子が発現しない領域でLbx1遺伝子を発現させるため,Lbx1遺伝子にマイオジェニンプロモーターを連結したベクターをES細胞に導入しキメラマウスを作成した。これらのキメラマウスを解析し,以下の知見が得られた。 1)Lbx1遺伝子を異所的に発現させても、初期胚における筋形成は正常であることが判明した。この結果から,本遺伝子は、筋芽細胞に四肢への遊走性を付与するようなメカニズムで四肢骨格筋の形成を制御しているのではないと推定される。 2)産仔後のキメラマウスにおける四肢骨格筋の組織学的解析を行ったところ、四肢骨格筋組織で,ヒト筋ジストロフィーに見られる症状と酷似した組織崩壊が生じていることが判明した.さらに,このキメラマウスの筋組織では,アポトーシスが高い頻度で生じていることを確認した(ジストロフィンを欠損したミュータントであるmdxマウスの筋組織と同じ程度). これらの特徴的な所見から、このキメラにおいては、筋組織が変性と再生をくりかえしていることが推測された。Lbx1遺伝子は,骨格筋において基底膜とαアクチンをつなぐ細胞骨格関連タンパク質群の発現調節に関与していることがを強く示唆された。
|