研究概要 |
ヒト疾患の多くは、多因子疾患であり、その個々の要因を明らかにしていくことは困難である。しかし、マウスにおいては、比較的軽微な個々の遺伝子変異であっても疾患全体に及ぼす機能的影響をinvivoで効率よく検出するシステムを構築することが可能であり、そのためにコンジェニックマウスを作製することが常套手段として用いられる。しかし、これまでのコンジェニックマウス作製方法は、戻し交配を10代繰り返すことにより遺伝的背景を均一にする作製法が用いられてきた。近年のゲノム解析技術の進歩により、マウスゲノムの詳細な遺伝子地図を作成することができ、それにはマイクロサテライトマーカーが多く用いられている。そこでこのコンジェニックマウス作製をマイクロサテライトマーカーを指標とし、より正確で時間を短縮して遺伝的背景の置き換えをスピードアップするスピードコンジェニックマウス系統の開発をおこなわれるようになってきた。本研究では多因子疾患であるインシュリン依存性糖尿病モデルにおいて、各疾患感受性遺伝子の機能解析を目的としてスピードコンジェニックマウス作製方法の検討をおこない、効率よい個体レベルで解析するシステム確立することを目的とした。その結果 1.マウス各染色体に20cMごとにNOD/shi, C57BL/6J,129/Svj,およびMSM間に多型を示すマイクロサテライトマーカーを選択した。 2.重要な糖尿病感受性遺伝子Idd1,Idd3,Idd4,Idd5およびIdd9についてこれらの遺伝子領域にSSLPマーカーを指標としてC57BL/6J,129/Svj,およびMSM各系統由来の各染色体領域を導入してコンジェニックマウス系統を作製し、糖尿病発症率の比較等をおこない、異なる遺伝的背景における糖尿病感受性遺伝子の疾患発症における寄与の差を明らかにした。 3.主要原因遺伝子Idd1(MHC)をにおいては遺伝的背景の異なるコンジェニックマウスを作製し、主要遺伝子発症への関与を検討した。
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