研究概要 |
本研究では,セリシンの優れた機能性に注目し,さらにはセリシンの有効利用と医用材料への応用を目的として,セリシンを含有した含水ゲル膜の作製を試みた。セリシンを含む膜として,セリシンのみ、及び柔軟性を増加するために若干の水溶性高分子であるポリビニルアルコールを混合し、これに2種類の架橋剤をそれぞれ添加することにより化学架橋を導入した膜、更にセリシンに対し倍以上のPVAをブレンドし架橋を行わない膜を作製し、得られた膜の構造と物性、更に医用材料への応用を目指した検討を行った。 本研究において作製された試料を実用性という観点から見た場合,溶出率、含水率,力学的性質の検討から強靭な高含水ヒドロゲル膜を作製可能であり、特にセリシンにPVAを混合しクエン酸により架橋した膜が最も適していることが判明した。このことはこれまでほとんど利用されずに廃棄されてきたセリシンを十分に材料として利用可能であることを意味し、本研究の大きな成果と言えるであろう。また、ゲル中の水の状態を始めて近赤外分光光度計(本科学研究費補助金により購入)によって詳細に検討する事が出来た。このことは近赤外分光法が新しい水の状態の解析法として有意な方法であることを意味している。 医用材料を目指した研究という観点から見た時、2年目の研究においては当初計画し実験に用いた架橋剤と比較し、より人体に安全な試料の作製を目指したため、時間的制約から一部の膜についてのみ酸素透過性と表面の状態に関する検討を行った。その結果、高い酸素透過性を有し膜表面の状態から見て細胞増殖性の可能性があるセリシン含有ヒドロゲル膜が作製可能であることが明らかになった。 尚、医用材料への応用を検討について欠かせない細胞付着・増殖性に関する実験は今後の課題として残った。この研究は引き続き行う予定である。
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