研究概要 |
本研究の目的の一つである生体の散乱特性を計測するため、1999年度までにゴニオメータを利用した散乱光強度の角度依存性計測システム(ゴニオフォトメータ)の基本構成を完成した。1999年度の研究成果は平成12年度第39回エム・イー学会にて発表した。2000年度にはゴニオフォトメータにより、円筒状石英セルからの散乱パターンを計測した。使用波長は805nmで垂直および水平偏光光の両方につき計測を行った。光学パラメータが既知のアクリル球分散液を用いてゴニオフォトメータを含む計測系の総合的なノイズの検討や感度の検討、Mie理論と比較ができるように単散乱と見なせる濃度の検討などを行い計測がほぼ可能であることが分かった。 そこで、血液を含めた最終的な測定では、光学パラメータ既知のアクリル球分散液を標準試料として散乱光強度の角度依存性の計測を行い、その測定結果とMie理論の計算で求めた微分散乱断面積(単位強度の入射光による散乱光強度の角度分布)とを比較することにより計測系の総合的な装置定数を定めた。なお、標準試料のアクリル球粒子分散液は4種用いた。引き続き生理食塩水で希釈した3種のヘマトクリット(赤血球の体績濃度)の血液について散乱光強度の角度分布を測定し、予め求めた総合的な装置定数から希釈血液の微分散乱断面積S(θ)を求めた。血液では試料の濃度によらずデータがほぼ重なった。また、文献値(A.Roggan et al., "Optical Properties of Circulating Human Blood in the Wavelength Range 400-2500nm", J.of Biomedical Optics4(1), pp.36-46, 1999)を参考に直径6μm、球粒子の屈折率1.40として計算した赤血球と等価な球粒子でのMie理論の計算値とほぼ合った。また、散乱係数および異方性係数を測定値から推定した。
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