研究概要 |
14族元素のハロ錯体では,RSn_2F_5(R=アルカリ金属)について検討した。RSn_2F_5の電気伝導性を測定した結果,K塩とRb塩は高いイオン伝導性を示したが,Na塩とCs塩は高温でも低い伝導性しか示さなかった。高イオン伝導性を示すRb塩の単結晶X線構造解析を370Kで行った結果,末端,架橋,三方架橋のフッ素をもつ層状アニオン構造を形成し,相転移後はc軸方向が縮み,ab面が膨張することがわかった。また,3つのSnに囲まれた新しい三方架橋のフッ素サイトが確認された。このように高温相ではSn周りのフッ素のサイト数が増大し,Snの層間に新しいフッ化物イオンの層が形成されることがわかった。 ^<87>Rb NMRの測定結果は,Rbのサイトが高温相では2から1に変化し,Rbサイトは等価であることがわかった。^<19>F NMRの測定結果は,低温では3種のフッ素による半値幅が約50kHzのブロードなスペクトルを示した。温度上昇につれて線幅は減少し,室温では非常にシャープなスペクトルが観測され,全てのフッ化物イオンが拡散に関与していることがわかった。^<119>Sn NMRスペクトルは低温ではブロードであるが,転移後は急激に尖鋭化した。これは,Sn周りの環境の球対称化と,Sn層間のフッ化物イオンサイトの形成を支持している。 15族元素のハロ錯体KSbF_4の高温相の粉末X線回折のRietveld解析を行った結果,立方晶系(Fm3m)の蛍石型構造であることがわかった。カリウムとアンチモンが無秩序にカチオンサイトに分布しており,フッ化物イオンが蛍石構造の陰イオンサイトだけでなく,カチオンによる八面体間隙のサイトにも存在していることがわかった。高温相の^<19>F NMRの温度変化は,昇温過程では相転移後は2kHz程度の線幅をもつスペクトルが得られた。降温過程では室温付近まで2kHzの線幅であり,フッ化物イオンの拡散運動が維持されていることがわかった。
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