研究概要 |
生体機能の化学的解明と開発の研究の一環として,植物細胞内で物質の蓄積・分泌をつかさどる小器官として知られているオイルボディの構造と機能の解明を計った。 1.オイルボディの構造の解明 カミツレ苗条原基のオイルボディはトリアシルグリセロールを主成分とし,その他にジ-およびモノアシルグリセロール,遊離脂肪酸,リン脂質,ステロール系脂質,および微量の蛋白質を含有していた。また,オイルボディは内部の貯蔵脂質を取り囲む単膜として存在していることが推測された。 2.オイルボディ内へのストレス応答物質の蓄積機構の解明 カミツレ苗条原基のオイルボディには精油成分の蓄積は見られなかった。しかし,オイルボディ内在蛋白質を調べると,発芽時の種子オイルボディ内の蛋白質はリパーゼ活性を示したが、苗条原基のオイルボディ内の蛋白質はカルボキシペプチダーゼ活性を示した。 3.オイルボディに内在する蛋白質の構造と機能の解明 カミツレ苗条原基のオイルボディに含まれる2種のペプチダーゼ(CpaseおよびTpase)の遺伝子クローニングを行い,シークエンス解析をした。Cpaseは501アミノ酸で構成され,セリンカルボキシペプチターゼの活性サイトを持ち,特徴的な構造としてN末端にロイシンジッパー構造を有していることがわかった。一方,Tpaseは501アミノ酸で構成され,チオールプロテアーゼの活性サイトを持ち,特徴的な構造としてプロリンリッチな部分を持っていた。また,植物培養細胞に化学的ストレスかけることによってこれらの蛋白質に関連するmRNAが増加することがわかった。
|