研究課題/領域番号 |
11694164
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
高分子構造物性(含繊維)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 園 (2001) 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (40304745)
梶山 千里 (1999-2000) 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (60037976)
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研究分担者 |
高原 淳 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (20163305)
佐々木 園 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (40304745)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2001
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研究課題ステータス |
完了 (2001年度)
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配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
2001年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2000年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1999年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 脂肪族ポリエステル / フルオロアルキル連鎖 / 薄膜 / 分子鎖凝集構造 / 高次構造 / 分子鎖コンフォーメーション / 膜表面自由エネルギー / 薄膜表面形態 / 分子鎖コンフォメーション / 一次構造制御された脂肪族高分子 / 薄膜表面構造 / X線回折法 / 赤外分光法 / 走査プローブ顕微鏡 / 高分子超薄膜 / 分子運動特性 / モデル脂肪族ポリエステル / 等温結晶化 |
研究概要 |
本研究では、結晶性高分子超薄膜の物性を支配する超薄膜中で特異的な分子鎖凝集状態と分子運動特性を解明する目的で、モデル高分子薄膜を調製しその分子鎖の凝集状態を分光学的分析法、表面ナノ構造解析法、表面ナノ物性解析法に基づき検討を行なった.平成11年度から3年間、九州大学とマサチューセッツ大学の研究グループがそれぞれの専門を生かして共同研究を行った。 平成11年度は、結晶性超薄膜表面における分子鎖凝集状態を解析する手法を確立する目的で、ポリエチレン単結晶表面の分子鎖折れたたみ構造及び薄膜表面の分子鎖凝集構造を走査プローブ顕微鏡観察に基づき評価した。ポリエチレン単結晶表面の水平力顕微鏡(LFM)観察から、試料表面とカンチレバー間に生じる水平力を測定することにより結晶表面の分子鎖折れたみ構造を評価できることが明らかになった。ポリエチレン薄膜の偏光近接場走査光学顕微鏡/原子間力顕微鏡観察では、球晶中心から半径方向に成長したラメラのねじれに起因する消光リングに対応して膜表面に周期的な高低が存在することが判り、薄膜表面の形状は膜内部の高次構造を顕著に反映していることが明らかになった。 上述の結果に基づき、平成12年度は、精密重合制御されたポリエステル薄膜の分子鎖凝集構造及び物性評価に着手した。α-ω長鎖アルカンジオールとフルオロメチレン短鎖を有するジカルボン酸の縮合重合から合成した脂肪族ポリエステル[(CH2)iOCO(CF2)jCOO]n(i=12,22,j=2,8,10)のバルク状態における分子鎖凝集構造を評価し一次構造との相関を検討した。脂肪族ポリエステル一軸配向試料の広角X線回折測定及び偏光赤外吸収スペクトル測定を行い、バルク結晶構造と分子鎖のコンフォメーションを検討した。その結果、いずれの試料においてもメチレン長鎖、フルオロメチレン短鎖そしてエステル基が凝集して結晶領域を形成していることが判った。結晶領域では、主鎖のメチレン連鎖長の増大に伴い、メチレン連鎖はより規則的なtransコンフォメーションに近づくが、フルオロメチレン連鎖の規則的な螺旋構造に乱れが生じること、また、分子鎖間のパッキング間隔は減少することが明らかになった。一方、フルオロメチレン連鎖長が増大すると、メチレン連鎖及びフルオロメチレン連鎖はそれぞれall-trans及び規則的な螺旋構造からのコンフォメーションの乱れが増大するとともに、分子鎖は分子鎖軸方向の乱れを伴ってパッキングすることが判った。分子鎖の局所的なコンフォメーションが分子鎖間の凝集状態、つまり結晶構造に影響を与えているものと考えられる。 平成13年度は、バルク分子鎖凝集構造に関する知見を踏まえ、各ポリエステル薄膜の分子鎖凝集構造を評価した。薄膜は、脂肪族ポリエステル試料をシリコンウェハー基板上、融点から過冷却度13Kの温度で等温結晶化することにより調製した.原子間力顕微鏡観察及びクロスニコル下での偏光顕微鏡観察では、各ポリエステル薄膜が球晶構造を有し、ポリエステル結晶格子の特定の軸が球晶半径方向と平行であることが明らかになった。また、フルオロメチレン連鎖長が増大すると球晶サイズが減少したことから、フルオロメチレン連鎖長と一次核の形成頻度に相関性があることが示唆された。ポリエステル薄膜の多重全反射赤外吸収スペクトル測定から、フルオロメチレン連鎖長が相対的に短い場合は、結晶領域におけるメチレン連鎖は規則的transコンフォメーションを有し自己組織化が顕著に起こることが明らかになった。一方、フルオロメチレン連鎖長が相対的に長い場合、フルオロメチレン連鎖のコンフォメーションはその長さで決まり、螺旋構造から乱れるほどメチレン連鎖のコンフォメーションは規則的になることが判った。薄膜表面自由エネルギー及び薄膜表面領域の化学組咸を静的接触角測定及びX線光電子分光測定に基づきそれぞれ評価した結果、低表面白由エネルギー成分であるフルオロメチレン基が薄膜表面近傍に極在していることが示唆された。ポリエステル分子鎖は薄膜表面近傍で特異的な凝集構造を有する可能性があることが明らかになった。
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