研究概要 |
21世紀における歴史的な文化遺産の継承が国際的に大きな関心を集めている.災害発生前の地すべり防災対策立案に必要な信頼されうる地すべり危険度評価と災害予測法を確立することを目的として,ユネスコ・IUGS-IGCP-425国際共同研究として研究を実施し,以下の結果を得た. (1)中国西安市の華清池に設置し、現在、西安市臨憧地すべり観測所の職員が観測を行っているペン書き式伸縮計に電磁パルス式伸縮計を併設し,データロガーを経由してPCに入力する高精度自動観測にシステムに切り替え、電話回線を介して驪山地すべり観測所までデータ転送を行う試験を行った. (2)岡山県高梁市の国史跡・備中松山城の変形し始めている基礎岩盤に差動トランス型伸縮計とクラック変位計を開発・設置し,岩盤変位の精密計測を開発したところ,3ヶ月間で最大数ミリの変位を観測した.またDEMによるシミュレーションを実施して崩落の条件を調べた. (3)パリ・ユネスコ本部において会議(1999年9月)を組織し、危険にさらされた世界的な文化遺産と地すべり災害予測及びその被害軽減対策について総合的な検討を行った. (4)ユネスコ世界遺産の中で最も著名で,大規模な岩盤崩壊の地形の真上に位置し,クラックや小崩壊などの危険な兆候を示しているペルーのマチュピチュのインカの遺跡において、文化庁,自然資源庁,地球物理研究所他の協力を得て、予測調査として2000年3月に綿密な地質・地形踏査と空中写真判読を実施した.その結果に基づき簡易型伸縮計10台と自記式伸縮計を2000年11月に設置し予備観測を開始した. (5)研究代表者とユネスコ地球科学部が中心となって組織した自然・文化遺産の危険度軽減と保護に関するシンポ(於:日本学術会議,2001年1月15日〜19日)において,マチュピチュ遺跡の予備観測結果および華清池地すべりの観測システムについて発表を行った.
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