研究概要 |
DNAには様々な傷害が生じている。その傷害を直ちに修復してDNAの遺伝情報を維持するために,細胞内には様々なDNA修復系が存在する。原核生物の場合,DNA修復には約50種類の酵素が関与するが,これまでに,組換え修復系のRecA,RuvA,RuvB,RuvC,ssb,等の他,塩基除去修復系のMutM,MutY,EndoIII,EndoV,ヌクレオチド除去修復系のUvrA,UvrB,UvrC,UvrD等,ミスマッチ修復系のMutS,MutL等についても,好熱菌由来の遺伝子についてクローニング・蛋白質の量産化・精製を行い,組換え修復との関係の包括的理解を試みつつある。 その中でもとくに,RecA蛋白質は組換え修復の中心的役割を果たしているが,そのRecAホモログを超好熱性古細菌や高度好熱菌からクローニングし,それら組換え修復に関与する酵素群の構造機能相関について解析した。その結果,それらホモログはいずれも,ATP加水分解,一本鎖DNA結合,さらに相同的DNA鎖交換活性を示し,機能発現機構は似かよっていた。しかし,超好熱菌酵素には構造的な特徴がみられ,ATPase活性の温度依存性のアーレニウスプロット,一本鎖DNA結合能やDNA鎖交換反応などが,75℃を境に顕著な増大を見せた。そこで,溶液中における蛋白質の立体構造を円二色性スペクトルや蛍光スペクトルで調べたところ,やはり75℃を境に立体構造変化が生じていることが確かめられた。それらの結果から,超好熱菌酵素は75℃以上でDNA結合部位を含む領域のコンフォメーション変化を起こすことによって,至適生育温度の100℃で高い触媒効率を発揮していることが示唆された。
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