研究課題/領域番号 |
11694265
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 一和 京都大学, 医学研究科, 教授 (00172263)
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研究分担者 |
菅原 照 京都大学, 医学研究科, 助手 (00312223)
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 講師 (40252457)
斎藤 能彦 京都大学, 医学研究科, 助教授 (30250260)
小川 佳宏 京都大学, 医学研究科, 助手 (70291424)
向山 政志 京都大学, 医学研究科, 助手 (40270558)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
20,500千円 (直接経費: 20,500千円)
2000年度: 9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
1999年度: 10,800千円 (直接経費: 10,800千円)
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キーワード | 血管作動性物質 / ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / ナトリウム利尿ペプチド / 血管 / 線維化 / 心筋肥大 / 糸球体硬化 / 心血管リモデリング / アンジオテンシンII / エンドセリン / 心臓 / 腎臓 |
研究概要 |
我々は、血液を送り出すポンプあるいは血液を通すパイプと考えられていた心臓や血管が、種々の生理活性物質を生合成、分泌していることを明らかにし、心臓血管内分泌学という概念を打ち出した。すなわち、強力な血管平滑筋弛緩作用を有するナトリウム利尿ペプチドファミリーのうちANP、BNPは心臓から分泌され、一方CNPが血管内皮細胞から分泌されることを明らかにした。また、血管内皮から強力な血管平滑筋収縮作用を有するエンドセリンやアンジオテンシンIIが産生、分泌されることも明らかになった。また、我々はエンドセリン受容体に関し、血管平滑筋細胞に発現し、血管収縮に関与するETA受容体及び血管内皮細胞に発現し、血管弛緩に関与するETB受容体の双方の遺伝子構造の決定に成功した。また我々の研究協力者により、2種類存在する膜型グアニル酸シクラーゼそのものであるナトリウム利尿ペプチド受容体(GC-A及びGC-B)の構造決定がなされた。このように、我々はいち早く分子生物学的手法を導入し、心臓及び血管そのものから合成分泌される新しい血管作動性物質及びその受容体の同定とその作用機構を明らかにしてきた。近年心臓血管病変の病態生理は「心血管リモデリング」という新しい概念で理解されるようになってきた。本研究は、心血管リモデリングにおける血管作動性物質の意義に焦点を合わせ、分子生物学的手法及び発生工学的手法を駆使し、遺伝子変異動物(遺伝子過剰発現トランスジェニックマウス及び遺伝子欠損ノックアウトマウス)を作成する。更に、それら動物を交配し種々の条件下で解析することでin vivoの心血管リモデリングにおける心臓血管ホルモンの生理的意義を解明することをその目的とするものである。本研究課題によって以下の研究成果を得た。 (1)本研究課題により、我々及び研究協力者によりBNPトランスジェニックマウス(Tg)、GC-Aノックアウトマウス(K/O)、AT1受容体、AT2受容体K/O、AT1受容体Tg、ET-A受容体、ET-B受容体K/Oに加えBNP及びCNP K/Oを作製した。 (2)BNP K/Oにおいて心筋の著しい線維化が認められた。また、ANP、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、TGF-β3、コラーゲンII遺伝子の発現亢進が認められた。 (3)BNP K/Oに対しaortic bandingを施行し、心筋に対する圧負荷を行ったところ、BNP K/Oの心筋線維化は更に増強された。以上より、BNPが心臓局所ホルモンとして心筋の線維化に対して抑制的に作用していることが証明された。 (4)テキサス大Garbersの開発したGC-A(ANP、BNPの受容体)K/Oは、血圧上昇及び心筋肥大を認める。GarbersよりGC-A K/Oの供与を受け、我々が既に保有しているBNPトランスジェニックマウス(Tg)と交配した。BNP-Tgにおいては、内軟骨骨化の活性化による骨格の伸長を認める。得られたBNP-Tg/GC-A K/Oにおいて血圧及び心筋肥大のフェノタイプは変化しなかったが、長管骨の伸長を認めた。この結果は、BNPが組織により異なった受容体を介して作用する可能性を示唆するものである。 (5)BNP Tgを用いて、5/6腎摘による腎臓障害モデルを作成したところ、コントロールマウスに比べBNP Tgでは、TGF-βの発現の抑制に伴う糸球体硬化の抑制が認められ、BNPが腎保護的に作用することが明らかとなった。 (6)CNP K/OはBNP Tgとは対照的に内軟骨骨化の障害、低身長を認め、更に早期死亡を認めた。 (7)コラーゲンIIプロモーターにCNP遺伝子を連結し、これをトランスジーンとして骨特異的CNP過剰発現Tgを作成した(CNP-bone Tg)。CNP TgはBNP Tgと同様に長管骨の伸長を認め、CNP K/OはCNP-boneTgとの交配により正常の発育が得られ、早期死亡は認められなくなった。このCNP-boneTg/CNP K/Oを用い、現在心血管リモデリングにおけるCNPの意義を解析中である。
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