研究概要 |
家兎海馬歯状回で最初に見出されたシナプス伝達長期増強(LTP)は動物の学習,記憶の基本モデルと考えられている。LTP誘導には後シナプスニューロン内でのCaMキナーゼII活性化反応が必要である。私達は,実際にLTP誘導時にCaMキナーゼII活性化反応を確認した。本研究では,1)a)CaMキナーゼII活性化反応を持続させるプロテインホスファターゼ(PP)2A不活性化反応,b)LTP誘導時にPP2A抗体によって免疫沈殿する55-kDa燐酸化蛋白質の確認,c)PP2A調節サブユニットに対する特異的抗体を用い,55-kDa蛋白質のPP2A調節サブユニットB'αであることの同定,d)in vitro実験で,CaMキナーゼIIがPP2A B'α燐酸化反応を触媒し,燐酸化PP2Aは,活性阻害を起こすことがわかった。2)長期記憶のモデルとしてLTP維持の分子機構を検索した。a)LTP誘導時にCaMキナーゼIV,MAPキナーゼ活性化反応を観察した。両酵素の活性化反応は一時的で,3分でピークを認め,30分で元のレベルに減少した。b)LTP時に,CREB燐酸化反応を観察した。阻害薬を用いた実験から,CREB燐酸化反応は,CaMキナーゼIV,MAPキナーゼの関与によることが明らかになった。3)a)宮本英七,山本秀幸,竹内有輔(研究協力者)はベルリンで開催された第17回国際神経化学会議,b)宮本英七は台北での第8回アジアパシフィック国際薬理学会,c)福永浩司,笠原二郎は,第29回(マイアミ),第30回(ニューオリンズ)北米神経科学会,d)福永浩司をスイス・ジュネーブ大学に派遣し,Muller教授と共同研究,e)T.R.Soderling,D.Muller両教授(海外研究協力者)を福岡市での第7回日本生化学会春季シンポジウムに招聘,f)A.A.DePaoli-Roach,P.Roach両教授(海外研究協力者)を仙台市での第4回国際プロテインホスファターゼカンファランスに招聘し,それぞれ共同研究成果の発表,情報交換を行った。
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