研究概要 |
ヒトの第6染色体6p21.3領域に位置するHLA領域と相同性を有する遺伝子が多数みいだされるヒト第1染色体1q21-25領域のゲノム構造をHLA領域と比較、解析することにより、MHCの進化の起源と進化の過程を解明することを目的として、まず、HLA領域と相同性を有する領域の一つである第1染色体1q21-22領域のシークエンシング解析をおこなった。その結果、セントロメア側から、CD1D-CD1A-CD1C-CD1B-CD1E-SPTA1-MNDA-IFI16-AIM2-BL1A-FY-FCER1Aの順に12個の発現遺伝子が見い出された。また、これらの発現遺伝子に加えて、20個の嗅覚受容体遺伝子をはじめとする29個の遺伝子候補あるいは偽遺伝子が新たに見いだされた。さらに、CD1遺伝子領域におけるドットマトリックス解析をおこなった結果、CD1遺伝子間には、HLAクラスI領域に顕著に見い出された遺伝子重複の痕跡は認められなかった。したがって、CD1遺伝子群の形成は太古に起きたものと推測された。 ついで、染色体重複直前のゲノム構造を保持する頭索動物ナメクジウオにおけるMHC相同領域のシークエンシング解析をおこなった。その結果、これらの総塩基数は350,270bpで、このうちに32個の遺伝子の存在が予測された。これらの遺伝子のうち、14個(RING3,h-Rev107-like,RXR,NEU-like,p44 protein,Notch,Selectinなど)の遺伝子については、上記のMHC領域あるいはMHC相同領域上に存在した。このように、ナメクジウオはMHC領域の構造を保持していることから、相同性をしめすヒト染色体領域の構造解析をおこなう上で有効なモデル動物であることが示唆された。
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