研究概要 |
本研究では、ポーランドと日本の消費動態を確認するため、日本側研究者とポーランド側研究者が相互に両国を訪問した。研究手法は消費者への長時間のインタビューにより,家計の意思決定の背後にある,家族関係,遺産相続,子弟の教育など基本的な家族構造を解明した上で,家庭,とりわけ主婦の意思決定がどのようになされるかを観察することにあった。ポーランドでは、社会構造の転換に伴い、消費者の心理が大きく変化していることが確認された。基礎的食料品や基礎的衣料品に関しては、その消費意思決定は極めて保守的で、所得の上昇による変化はみられなかった。一方、新たな消費対象、とりわけパソコンや乗用車への支出、ならびに家屋の新築や増改築などの資産形成には、所得の上昇と社会的風潮が大きく影響することが判明した。長期的で合理的な生活設計や資産配分を行っているとは到底述べることができない。一方,日本の場合,基礎的消費に関してはポーランド同様に保守的であったが,一方,家屋の新築・改築ならびに子供の教育費に関しては歴史的に与件として扱われ,長期的視野のもとに所得の変化などに無関係に実行されていることが分かった。家の新築と子供の教育は経済意思決定を超越する絶対的事項のように思われ,これが残余の消費に影響を与えていた。ただし,所得の上昇が乗用車など新規商品の購入に優先的に振り向けられていることは同様であった。 本研究が採用したマイクロサーベイは、外国人が質問者になるという点も含めて,日本では前例のない手法であったが、きわめて強力な調査手法であるということが判明した。日本では未だマイクロサーベイが実施されていないが,本研究は大いに参考となろう。
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