研究概要 |
近年ますます有人宇宙活動が活発になっているが,宇宙ステーションのような閉鎖空間での火災は,乗員の生命を直接脅かすだけでなく,火災による搭載機器の損傷が致命的となりうる.宇宙ステーション内部は地上と異なり,微小重力かつ高酸素濃度(30%)という特殊な環境である.とくに,微小重力環境では,浮力による自然対流が発生せず火炎周囲の流れが非常に遅いという特徴がある.本研究では,理論解析により,火炎周囲の流れが極めて遅い場合には,周囲へのふく射損失の影響が顕在化し,火炎伝播が抑制されるという予想を立てた.平成11年度においては通常重力環境においてPMMA試料を鉛直下向きに伝播する火炎の伝播速度の測定を行い,スケール解析の結果と比較をおこなった.平成12年度は,さまざまな条件(周囲流速,酸素濃度,試料厚さ)での微小重力環境での火炎伝播速度を測定し,ふく射損失により火炎伝播速度が減少する条件を見出した.そして,平成13年度は,これらの条件で火炎周りの温度場を干渉系により測定を行った.その結果,火炎と周囲流れの相対速度が低下することにより,ふく射損失が大きくなり,定常的な火炎伝播が出来なくなる様子を捉えることが出来た.また,試料厚さにより,火炎伝播速度が極小を示す周囲流速が異なるという結果が平成12年度に得られていたが,温度場を測定した結果,火炎伝播速度が極小となっている条件では,上の述べた相対速度が極小となっていることが確認された.この実験結果から,当初立てた火炎伝播モデルが妥当であることが示され,この結果から,無次元ふく射損失に及ぼす各パラメータの効果が明らかになり,たとえば定常火炎伝播が出来なくなる試料厚さの予想などが出来るようになった.
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