研究概要 |
本研究は、本校と韓国啓明大学校工科大学の研究者がペアを組んで以下のテーマについて連携しながら共同研究を行った。 1.高合金・炭化物系耐摩耗材料の凝固組織制御プロセスと耐摩耗性の研究 耐摩耗性を支える重要な相は高硬度の特殊炭化物であり、それらは強い炭化物形成元素(Cr, Mo, W, Vなど)を複数かつ多量添加することにより凝固時に晶出制御できることが分かった。炭化物形成元素を総添加量が20%となるよう組合せを変えると、Cr-Mo-W系では(M_7C_3+M_6C)、V-Mo-W系では(MC+M_2C)、Cr-V系では(M_7C_3+MC)の炭化物が晶出する凝固組織が得られた。各材料のアブレージョン摩耗試験を行った結果、(MC+M_2C)の組合せの合金がもっとも耐摩耗性に優れていることが分かった。 2.イオンビームによる表面改質薄膜の耐スパッタリング性の調査 EB(イオンビーム)蒸着法で製膜した膜厚200-500nmのMgO薄膜(ガラス基盤)に対して、高速原子線(1.5kVで加速したAr原子)でスパッタを行い、短時間で薄膜のプラズマに対する耐スパッタ性を評価した。この方法は絶縁性の薄膜に対して利用できる点でイオンビームを利用する評価より有効である。膜の結晶性については薄膜X線回折装置で各試料のピークプロファイルを比較した。その結果、結晶性には差がないものの製膜条件により耐スパッタ性で20から30%の有意差が認められ、原子間力顕微鏡による表面状態観察や密着性試験を実施して分析を進めている途中である。 3.ナイロン/酸化防止剤複合体の研究 ポリアミド(ナイロン6)と無機顔料複合体(アルミニウムペースト)を二軸押し出し機で混練してペレットを製造した。その無機顔料/ナイロン複合体において、(1)無機顔料のナイロンへの分散を良くするために2種類の分散剤を検討したところ、アクリル酸系ワックスとアルミニウムカップリング剤が有効であることを見出し、その最適配合量を決定した。また、(2)機械的性質(引張強さ、伸び、衝撃強さ)を長期に保ち、黄色化を防ぐのにフェノール系酸化防止剤が有効であることを見出し、その最適配合量を決定した。 4.多成分系合金の耐摩耗性の研究 0,2,5及び10%Coを含有する他合金系白鋳鉄について熱処理特性を調査するとともに、スガ式摩耗試験及びピンオンディスクにより耐アブレ-ジョン摩耗性及び耐すべり摩耗特性を調査した。その結果,焼戻し後の最高硬さはCo含有量が増加するほど増加し,硬さが高いものほど耐アブレジョン摩耗性が優れたいることがわかった。また,耐すべり摩耗特性はすべり速度が3〜4m/sの範囲でCo量が高いものほど良いことがわかった,これは摩耗時に形成される酸化皮膜の生成に関係すると考えられた。
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