研究概要 |
本研究は,1穂籾数あるいは籾1粒重の増大による1穂重の大きい品種,すなわち超穂重型品種の籾数,さらにはシンク容量(面積当たり籾数×籾1粒の容積)の成立過程とその登熟特性について明らかにすることを目的とした.得られた結果は以下のように要約された. 1.シンク容量は多収性の指標である潜在収量(面積当たり籾数×精玄米1粒重)と密接に関係した.近年育成された多収性のインド型半矮性〜中稈型穂重型品種は,面積当たり籾数が多いことに加えて籾1粒重(容積)が優ることにより高いシンク容量を確保していた.また,これらの品種では,茎葉部から穂への物質の輸送経路である穂首節間の維管束数や断面積が大きく,物質輸送上有利な体制を備えていた.2.粒大(精玄米千粒重:15.05〜37.97g)を異にする水稲品種の登熟過程は,Logistic関数式によく適合し,最終粒重は主要登熟期間(最終粒重の15.9〜84.1%の時期)の日数よりも,その期間の乾物蓄積速度によって決定されていた.すなわち,粒大の大きい品種では登熟速度が速く,登熟期間の差は小さいと推定された.3.移植期から出穂期までの窒素施用量が少ないほど超穂重型水稲品種の籾の長さ,幅,投影面積が増加し,千粒重も増加した.また,穎花の分化促進,退化抑制のための穂肥の施用により,籾殻の長さ,幅,投影面積が減少し,千粒重は低下した.籾の比重は粒重と密接に関係し,精籾重は玄米の体積に,玄米の体積は厚さに支配された.4.超穂重型水稲品種の登熟および精籾千粒重は,登熟期間の籾1粒当たりの根活力と高い有意な正の相関関係を示し,籾1粒当たりの根活力が高くなると,特に下位の1次,2次枝梗籾(弱勢穎花)の登熟歩合や精籾千粒重が大きく向上した.
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