研究課題/領域番号 |
11710011
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
印度哲学(含仏教学)
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研究機関 | (財)東方研究会 |
研究代表者 |
佐久間 留理子 (財団法人)東方研究会, その他部局等, 研究員 (60280658)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2000年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1999年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | パンチェンラマ / 観自在 / 『サーダナマーラー』 |
研究概要 |
チベット仏教におけるゲルク派(旧カダム派)のパンチェンラマ四世によって編纂された『パンチェンラマのサーダナマーラー』(国際インド文化研究所ローケシュチャンドラ編)には十数種の観自在の成就法が収められている。それらの中から、平成十二年度は、如意輪観自在、八難救済十一面観自在、金剛蔵破壊観自在、獅子吼観自在、勝者の海観自在、八難救済観自在、宇宙主観自在、蓮華手観自在、極楽観自在、不空鉤観自在、不空供養宝珠観自在の成就法のチベット文をローマナイズし、テキストのデータベースを作成した。また、成就法の翻訳を行った。 これらの成就法に説かれる十数種の観自在の中、獅子吼観自在は、『サーダナマーラー/サーダナサムッチャヤ』(インドにおいて成立した成就法の集成)や、そのチベット訳の一つである『トムタギャンツォ(sGrub thabs rgya mthso)』(成就法の大海)にも見い出されるので、図像及び表出方法について、これらの文献との比較考察を行った。獅子吼観自在の図像学的特徴と陀羅尼は、インドの成就法のものと概ね同じであるが、実践方法において相違する点がみられる。 例えば、本尊の観想を終えた後、インドの成就法では、八つの曼荼羅をつくり本尊を供養して、その曼荼羅の土の残りを病人に塗ることが説かれているが、『パンチェンラマのサーダナマーラー』では、そのような記述はなく、本尊の供養は、ナーローパの流儀にふさわしくなすことが説かれ、カギュ派的な要素に置き換えられている。また、本尊の観想を終えた後、曼荼羅と壷の供養(再び観想が行われることもある)を行い、師と弟子の間で視覚化した曼真言のやりとりを観想することが説かれているが、これらの次第はインドの獅子吼観自在の成就法には知られていない。このように、インドのものには見られない新たな要素が付加されていることが分かった。 一方、成就法の後半部分に説かれている曼荼羅と壷の供養と曼真言の次第は、獅子吼観自在の成就法だけでなく、他の多くの『パンチェンラマのサーダナマーラー』所収の観自在成就法においても見られるものであり、成就法の次第がその後半部分において定式化していることを示している。このように、各々の成就法の特色は、獅子吼観自在の成就法と同様、主として成就法の前半部分にみられることも分かった。
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