研究課題/領域番号 |
11710020
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学(含芸術諸学)
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研究機関 | 名古屋大学 (2000) 島根大学 (1999) |
研究代表者 |
秋庭 史典 名古屋大学, 人間情報学研究科, 助教授 (80252401)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1999年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | リーバーマン / ベルリン / デュッセルドルフ / ネットワーク / 美術教育制度 / ツーリズム / アメリカン・マネー / 移動 / ムンカーチ / ハンガリー / 越境的 / 識別不可能性 / ウーデ / パール |
研究概要 |
最終年度は、前年度の成果を受けて、次の点から出発した。1リーバーマンの作品を「コスモポリタン」及びその対となる「ユダヤ民族主義」から語ることはできない。2同様に、「リアリズム」や「印象主義」といったレッテルから解放してやる必要がある。上記の観点から語れば、リーバーマンの作品は単に遅れてきた「リアリズム」や見当違いの「印象主義」、つまりは否定的なものとして排除されてしまう。3「リアリズム」や「印象主義」が前提する芸術家像、すなわち自然と直に対し自分の見たままを何物にも囚われず表現する芸術家という像を捨て、観点を画家個人から個人を含めたより広い文脈との関係、即ち「流通」・「移動」や「ネットワーキング」へと移し、そこでの拘束条件と画家の相互作用から作品の生成を肯定的に理解する。 その結果、以下の新たな成果が得られた。1「美術教育制度」を背景にしたネットワークの形成。ベルリン、ワイマール、デュッセルドルフ、ハーグ等々というリーバーマンの移動経路は、デュッセルドルフを基点とする美術アカデミーを背景にした当時の画家共通のルートである。2「アーティスト・ツーリズム」を背景にしたネットワークの形成。リーバーマンが残したオランダ、バルビソン関連の作品も当時の「芸術家コロニー」やツーリズムとの関連で見られねばならない。1、2ともムンカーチに代表される東欧のネットワーキングが絡んでいる。3「アメリカン・マネー」をも含めた市場を背景とするネットワークの形成。彼の作品は、本来こうした複数のネットワーキングの作用するなかで肯定的に生産されたものである(各々の局面に照らせば、生産された作品にいかなる遅れもない)。こうした中心を異とする複数のネットワークの存在にこそ、「都市ベルリンの厚み」は読みとられねばならない。このことが明らかにされた。
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