研究概要 |
自己説明(Self-explanation)とは,学習中に自らの知識を振り返り,分かっていることと分からないことを区別したり,それにもとづいて新たな情報を求めていったりする意識的な学習活動のことを言う. 本研究に先立つ著者らの研究では,自己説明活動の欠点と一つと考えられる学習者にかかる心的負荷の軽減をめざし,自らの知識や理解を外化物を用いて整理,統合するために電子ダイアグラムアプリケーションを利用した学習活動を提案し,その効果を検討した.具体的には,大学学部生を対象として一般教養の心理学の科目に相当する内容である「人間の記憶システム」についての講義テープを作成し,その内容をまとめた配付資料とともに学習者に提示して自己説明をしながら学習を展開してもらった.その際,電子ダイアグラムを用いて外化物として自らの理解を整理統合する群と,通常の紙と鉛筆を利用してメモを取る群を設定し,その群間での概念的理解の違いを比較した.結果として,電子ダイアグラムを用いた群の学習者の概念的理解がより高いことが分かった. これをうけて,本研究ではさらにより有効な自己説明活動を展開してもらうための教示を考案し,その効果を知識を外化するメディアの違いと比較しながら検討した.具体的には,実験条件として方略的な自己説明を教示する群とそうでない群を設け,それぞれの群の中で電子ダイアグラムを用いる条件と紙と鉛筆を用いる条件をさらに区分した.その結果,方略的自己説明の教示は電子ダイアグラム群において有効であり,より柔軟に理解を外化することができる環境においてその効果が検証された.
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