研究概要 |
この研究課題では,とりわけ1)社会理論をめぐる討議空間の変遷と,2)討議教育の展開過程の二つを探求した。 まず第一に,日本の戦後の社会科学的な討議空間が形成される際の理論的な支柱となったマックス・ヴェーバーの社会理論がいかに日本で受容されてきたかを取り扱うシンポジウムを主催し,そこでの討論をもとに『マックス・ヴエーバーの新世紀』を公刊した。そこでは戦後の社会科学的な討議の基調をなした比較文化・歴史認識のグランドデザインを捉える視座(合理化理論)が,四つの段階(a.非進化論的,b.進化論的,c.複線的・進化論的,複線的・非進化論的)を経て変化してきたと整理し,そして今後の社会科学的な討議においては,最後の複線的・非進化論的な視座への移行が肝要であることを明らかにした。 第二に,戦後日本の討論教育の実践的な推移に関して歴史的な解明に着手した。ここでは探求の第一段階として,とりわけ日本の「国際化」が謳われ始めた1970年代末からの,日本の討論教育の変化をとりあげた。その結果,この1970年代末を境に「ディベート」という言葉が,「討論」という従来の呼び方と二項対立的に使われはじめ,それが同時に「日本人=議論下手」というステレオタイプの形成とともに進んでいったことが明らかになった(2000年10月プダペストの国際学会にて報告)。
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