1、昨年度構築した自己物語論を展開し、単著としてまとめた(11を参照)。その要点は、 (1)自己は自分自身について語る物語(自己物語)を通して生み出される (2)自己物語は、「語りえないもの」(自己言及の背理)を前提にし、またそれを隠蔽する仕組みである (3)この「語りえないもの」を挺子にして、自己の書き換えをはかるのが物語療法である 2、昨年度に引き続き、「あゆみの図書館」(仙台市)に所蔵されている多数の自分史を調査し、分析した。分析の焦点は、自分史を執筆する動機が時代によってまた世代によってどのように変化するのかという点にしぼった。その結果、 (1)1990年代以前には、身の回りのものに自分の体験を伝えたいという伝達志向が強く、 (2)1990年代以降には、一般に自分の経験を整理することで、いまの自分、これからの自分を再確認したいという自己構成志向が強いということが確認された。
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