本研究では、昭和26年に開始され平成8年に終了した朝日新聞社・全日本健康推進学校表彰会主催の「健康推進学校表彰事業」(平成2年までは健康優良学校表彰事業)の実施にあたっての活動成果の評価観点と表彰校のその後の活動展開を調査することにより、こんにち国際的に推進がなされている「ヘルス・プロモーティング・スクール」プロジェクトとの比較を行うことにより学校教育における学校保健活動や健康教育活動が果たす積極的役割とその課題を明らかにすることを目的とした。調査は、国内外の関連資料・文献による検討と都道府県教育委員会および既表彰校への質問紙調査によって行った。その結果の概要は以下の通りである。 1)日本の健康推進学校においては、学校・家庭・地域の連携が重視され、学校保健委員会を中心にその活動が立案・運営されている。 2)健康に関する学習および指導は全教科を通じて展開されるとともに、教科外の諸活動や学校行事、校外活動、社会参加、保健管理を通した包括的教育体制が指向されている。 3)以上の過程で児童・生徒の体験的・研究的・組織的活動が積極的に取り入れられている。 4)ヘルス・プロモーティング・スクールにおいては、物理的および社会的環境の整備・ 改善を行い得る意思決定および合意形成がめざされ、個別の学習課題よりも、ネットワ ークやコミュニケーションに重点をおいた教育が指向されている。 以上の結果から、日本の健康推進学校活動は、ヘルス・プロモーティング・スクールに比して教育内容レベルでの多様化が進んでいる反面、ネットワークや環境整備の点で課題が残されていることがわかった。
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