研究課題/領域番号 |
11710147
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山口 健二 岡山大学, 教育学部, 助教授 (90273424)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 読書の社会学 / 一般教育 / 文化配信 / 読者の社会学 / 文化の流通 |
研究概要 |
本年度はCraneをはじめとするアメリカ文化社会学者を参照しながら、高等教育機関と出版社という二つの"文化配信制度"が戦後の日本でいかに成立し、機能したか総括した。 その正当性をプロデュースする非市場的システムが立ちあがるとき、文化は商品として大衆消費されうる。Crane、DiMaggioらの研究蓄積から導きだされる命題である。彼らはポップカルチャー消費を拡散性・普及性に、ハイカルチャー消費を凝集性・排他性に閉じこめる二分法に慎重である。ハイカルチャーもときに普及性をもつ。 戦後日本の教養消費(人文系であれ芸術系あれ)に特徴的な点は、最初に文字を介した消費がなされる点にある。解説先導型といおうか。作品の直接消費に先だち書籍による間接消費がなされる。本研究が高等教育機関と出版社に注目した理由はここにある。高度成長期にかけて、この間接消費をサポートする体制は着実に整備された。文庫や新書といった廉価啓蒙書が大量生産され、商業ベースにのった。角川書店の成功はその最たる例だった。またこの時期、大学知識人は国民の教養消費の指南役を自負していた。例えば桑原武夫は「新しいデモクラシーとヒューマニズムの精神による、読書の基準化」の試みとして世界近代小説五十選を作成した。1950年代に集中する名著案内や教養指南書も多くが大学教官によるものだった。全国で発足した新制大学が教養課程を必須の構成要素とし、"良識ある市民"の形成を目指した時代。日本が"文化国家"として再出発し、教養出版事業にも活気があった時代。制度的につくられた教養人という視角があてはまりのいい時代だった。 わが国の文化社会学は、ブルデューがパイオニア的に紹介されたこともあって、家庭における文化伝達を強調しがちである。そんななか、家庭からは独立した"制度"による文化配信を強調した点が本研究の第一の特色である。
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