本年度は昨年度に引き続き、国内の各界の倫理問題関係の資料及び文献の収集を進め、その成果として、松本のウェブページ- 「調査・個人情報・倫理」資料館 http://human.kj.yamagata-u.ac.jp/ -にて公開をし、順次情報を追加・更新している。 資料館の内容は「資料目録」と「文献目録」の二つから成る。資料目録では情報を持つ主体ごとに五つの分野(研究者、行政、ビジネス、報道、医療)に分け、関連する法令・倫理綱領・指針や、個人情報保護問題・倫理問題に関する団体の意見書や声明などについて所在情報(単行本、雑誌、WWW)を記載している。文献目録の方は、単行本と雑誌記事・論文の2種に分け、上記所在情報に載せた掲載書・誌を中心に関連する文献をリストアップしている。そして資料目録から文献目録にリンクを張り、所在情報をクリックすると該当する文献のページが表示されるようにし、資料を探すひとの便をはかっている。 また、主に国内の各界の議論の内容や進展の具合について調べた結果、内発性と自己規律性、横断性の乏しさが問題点として見いだされた。もっとも進んでいる医薬品の治験基準(新GCP)が倫理規定と内部審査機関の双方を設けているものの、これ以外では人間を対象にした調査や実験の前に倫理的側面を審査をする組織は無く、事後の論文掲載時の審査に倫理規定を設けている学会はまだ二つ(日本発達心理学会、日本社会学会)に留まっている。 現段階での最大の外圧は国内の「人権救済機関」構想として登場しているが、医学界と並んで世論の批判が厳しい報道界においてすらも確固とした自律機関(報道評議会)の設置には至っていない状況である。一方、研究者に対してもこの「救済機関」は影響力を持つと思われるが、学会として危機感をもって対応しているのは日本疫学会一つのように思われる。 そして各界の議論においては、他の領域にまで視野に入れたものが意外と乏しい。他組織の倫理規定を知る際には、当「資料館」のような資料提供ページは価値あるものと思われる。
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