研究概要 |
本研究は,日本語方言の条件表現の体系を,形態的・統語的・意味的・談話的側面から総合的・統一的に記述し,そのようにして記述した複数の方言の体系を対照することによって,日本語諸方言の条件表現に見られる,広義の文法的特徴の共通点と相違点を明らかにすることを目的とした。 この目的のために今年度(第2年度)は,(1)分析資料としての方言文字化資料のテキストデータベース化,を継続し,(2)音声資料のメディアコンバート,を完了した。(1)は,研究者を対象にモニター公開し,共有の研究資源とする可能性を探った。また,(3)各地の方言文字化資料から条件文を構成する接続形式を拾い出し,(4)口頭発表「方言の極限系のとりたて」(2000.8.28,東西言語文化の類型論研究会,於:筑波大学)の中で,その分析結果に一部触れた。さらに,(5)臨地面接調査のための地域対応版調査票を作成し,(6)山口県下関市において,高年層話者を対象に臨地調査を行った。 条件表現のうち順接仮定条件表現については,談話論的要因の関わり方に方言間で違いがあるという見通しに立って,「期待/反期待」という発話の意図が関与的な方言と非関与的な方言,同一の状況を「条件関係」として表現する方言と「継起関係」として表現する方言,といった観点から各地方言の分析を行った。また,共通語の「なら」にあたる意味で「バ」を用いる方言,順接仮定条件と原因理由を同じ形で表す方言などについて,接続形式の共時的な意味の広がりと,歴史的な変化の過程について考察を行った。
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