研究課題/領域番号 |
11710255
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
日比野 啓 成蹊大学, 文学部, 講師 (40302830)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2000年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1999年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 身体論 / 舞踏 / 花組芝居 / アン・ボガート / 山の手事情社 / 鈴木メソッド / アンナ・D・スミス / 指輪ホテル / 大野一雄 / アン・ボガード / メルロ=ポンティ |
研究概要 |
1960年代以降の日本のアングラ演劇・舞踏がその活動目標の一つとしていた「日本人(独自)の身体性の(再)創造」は、ウィリアム・マロッティらによって批判された(1997年、マロッティ)。身体の諸条件は社会的・経済的に制約されている以上、時代を超越した「日本人的な身体」というものはありえず、むしろ暗黒舞踏の創始者土方巽や早稲田小劇場の鈴木忠志の試みは、ありもしない伝統/期限をねつ造するという近代特有の運動の中に回収されるものにすぎない、というのがその主張であった。 今回の調査は、大筋でこの仮説の正しさを検証するものとなった。アン・ボガートら、「鈴木メソッド」をアメリカ人俳優の身体訓練として用いているアメリカの演劇人たちはその「普遍性」を強調し-このような「普遍性」の神話もまた批判的に考察されるべきではあるが、ここでは触れない-日本人のために考え出された訓練だとしても、導入から三十年以上経過した現在、鈴木メソッドはさまざまな人種・民族の俳優によって用いられて効果を上げている、ということをインタビューで強調した。羊屋白玉(指輪ホテル)や安田雅弘(山の手事情社)のような、「身体の演劇」の試みを現在においても探求し、特異な身体を舞台に登場させている演出家たちも、「日本人的な身体」を自分たちが作り上げているかどうかについては否定的な見解を示した(「羊屋白玉インタビュー」「若手演出家に聞く:安田雅弘」)。 だが土方や鈴木の試みそのものを否定するべきではない。「言葉の演劇」が隆盛を誇るアメリカ演劇においても、たとえばアンナ・デヴェア・スミスが行っていることは土方や鈴木の仕事の延長線上に捉えることができるだろう。1991年のブルックリン・クラウンハイツ事件や92年のロス暴動といった、人種間対立から生じアメリカ国民にトラウマ的記憶を与えた出来事を扱い、一人芝居のかたちで事件の証言者たちになりかわって事件を語るという彼女の試みは、他者の身体に取り憑いた幻想を共有することで、身体を言葉以前の想像界の領域で捉え直し、国民的な記憶を身体にくさびのように打ち込むことであると考えられるからである(「ロスアンゼルスの悪魔祓い-ジェイムズ・エルロイ/マイク・デイヴィス/アンナ・デヴェア・スミス」)。
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