研究概要 |
本研究の目的は,話者交替などの会話調整現象と韻律特徴との関係を実際の会話データにもとづいて定量的に分析することによって,韻律特徴が会話コミュニケーションにおいて果たす役割をあきらかにすることである.具体的には以下の2点を行なった. 1.高品質な自発的音声データを効率的に収集・構築するための手続きの確立. 2.韻律特徴と話者交替との関係を会話データにもとづき定量的に分析することで,どのような韻律特徴が話者交替という会話インタラクションに影響を与えるかを検討. 自発性の高い音声データを高精度で収集し,それを効率的かつ高精度に文字化する技術を確立することが現在求められている.本研究では,これらの手続きの確立を課題の一つに据え,検討を重ねてきた.その結果をマニュアルの形で文書化すると同時に,学会においても口頭発表し,広く普及に努めた.作成したマニュアルについても希望者に公開している.またここで検討した手法は,かなり高度な収録環境及び計算機環境を前提としたものであったため,このような環境を持てない研究者のために,より簡便な方法についても検討し,一般学術雑誌にて報告した. 次に自ら作成した会話データにもとづき,話者交替現象と韻律との関係を調べ,分析対象としたピッチパターン,パワーパターン,発話長など,5種類の韻律特徴が話者交替の有無と強い相関関係にあることを明らかにした.またこれらの韻律特徴が文末を特徴付ける要素と類似しているという事実にもとづき,話者交替に関する新しいメカニズムを構築し,その内容を論文にまとめた.
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