研究概要 |
平成12年度の研究目的は,平成11年度に明らかにされた割引率が時間によって変化する場合の合理的バブルを排除する条件を,現実データを用いて実証的に検討することである。明らかにされた条件とは,合理的バブルが存在しないことの必要条件が株価と配当の和分の次数均等化である。この条件を検証するために,株価,配当,利子率のデータを収集することからはじめた。これには,院生のアルバイトを雇い対応した。次に,実証方法の決定である。実証方法としては,一般的に用いられる帰無仮説を非定常として設定された単位根検定と帰無仮説を定常として設定されたKPSSテストを用いた。最後に,RATSやTSPといった実証ソフトを用いて,実証研究を行った。その結果,日本の株価データは合理的バブルを排除する必要条件を満たしていることが明らかにされた。このことにより,日本の「バブル現象」が,合理的バブルに起因するものではない可能性が示唆され,「バブル現象」のメカニズムを探るには更なる研究が必要であることが明らかにされた。 この論文の改訂の段階で,構造変化を考慮した場合の合理的バブルの検証を行うべきではないかとの指摘を受け,レジーム・スイッチ・モデルと呼ばれる構造変化を考慮した単位根検定を行った。その結果は,合理的バブルの存在を支持するものではなく,より強固な形で本研究の結果が支持された。
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