研究概要 |
本研究の目的は、系列などに見られるような日本企業に特徴的な長期的なアウトソーシングを支える企業間の協力関係を支える企業間での信頼構築のメカニズムについてその特性を欧州の事例研究と対比しながら比較分析した。企業間関係については日本企業の系列では、長期的な信頼関係が、特に「善意に基づく信頼(Goodwill Trust)」といわれる未来志向の長期的で互酬的な信頼関係が機会主義を抑制し、取引コストを削減し長期的取引関係を安定させるだけでなく、組織間での共同のイノベーションへの協力を容易にしてきた(Sako,1992;Dore,1993)。この調査研究では、企業間で継続的にある活動を外部委託している場合(すなわちアウトソーシング)の協力関係において、企業間でのプロセス・イノベーションや品質管理での協力を支える企業間での信頼関係が生成・発展・衰退するメカニズムを国際比較の視点も盛り込みながら調査と分析を行った。日本の系列関係に見られる日本企業の競争力の特徴であるインクリメンタル(継続的)な工程革新(新宅,1994)は、このような相互発展型の信頼関係をベースに展開していると考えられる。この調査研究においては、日欧の合弁事業や日本の電機メーカーの協力会での事例研究を行ったが、それによると日本の企業間関係は、組織間信頼の中核となる長期的・無限定的・個別的な相互コミットメントの質的発展を、強連結の組織間ネットワークにおける高密度のコミュニケーションとそれによる規範、行動期待の共有が促進しているのが特徴ではないかと考えられる。つまり日本の企業間関係は、系列に示されるように、代表的な「信頼による統治」の仕組みを有するといわれ、それを強い紐帯で高密度の組織間ネットワークが支えているといわれている(Uzzi,1997)。
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