本研究は、地域企業(regional company)の組織間ネットワーク戦略、とりわけ住宅産業に焦点を当て、地域環境に適合した住宅を建築するために、地場の林業と製材所、建築家、地域工務店および住まい手が連携し、協力する地域型住宅運動の発展プロセスを研究した。ここでの研究課題は、こうした運動が全国各地でどのように展開されているのかという実態把握とともに、立場の異なる多様な主体がどのように協力関係、信頼を構築し、ネットワークを形成していくのか、その際に何がポイントとなるのか、今後どのような点が課題となるのかに関して考察することであった。 実態調査として、「木陽倶楽部」(吹田市)、「土佐派の家」(高知)、「モクネット」(秋田)、「TSウッド」(徳島)、「トライウッド」(北九州)、「東京の木で家をつくる会」(東京)などを調査した。その結果得られた知見は以下の通りであった。並材を利用した産直型の地域住宅の場合、システム構築上、(1)製材所には材を乾燥させるという意識がない、(2)製材の精度が低い、(3)規格材ではないと山側は対応が困難である、(4)作り手側に並材に対する抵抗感がある、(5)都市側に林場が不足している、(6)杉は弱く、檜のほうがよいという信仰がある、といった様々な問題を解決する必要があることが明らかとなり、今後の政策提言に有用な視点が得られた。また、理論的には、(1)産地側と都市側の交流の「場」をつくり、期待形成のプロセスを創出すること、(2)ネットワーク内での個々の参加者の役割認識と拡大をはかること、(3)運動の意味を共有すること、(4)成果の可視化をはかること、(5)正当性の確保を行うこと、などの視点が得られ、組織化プロセスの自然体系モデルに対して有益な論点を提供することができた。さらなる理論構築を行うことが今度の課題である。
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