研究概要 |
本研究では,1980年代後半より利用可能となったアナリスト予測データを用い,わが国のアナリストによる企業利益予測の精度と株価に対する情報効果を検証した.本研究では,最大で28社,800人強のアナリストにより毎月公表される予測情報の平均(コンセンサス予測情報)を用いた点に大きな特長があり,研究結果の精度,一般性に大きな信頼性を与えることができた. アナリストの企業業績予測の能力・特徴では,アナリスト予測は(1)圧倒的に東証第1部上場銘柄に集中,(2)日経平均採用銘柄に集中,(3)企業規模(時価総額)の大きい企業に集中していることが判明した.また,(4)決算期が近づくにつれ,予測誤差が減少する.特に前年度決算報告,当期中間決算報告時に大きな修正が行われること,(5)アナリスト予測は全般的に楽観的な予測(正の予測誤差)を行っている,(6)アナリスト数により予測誤差に差が存在する,などの特徴が明らかとなった.原因として企業との関係維持,セルサイドにあるアナリストの立場等を指摘した.さらに利益水準が大きく変化するケース(赤字転落,黒字転換)ではアナリストによる利益予測が困難であること,前期予測の精度が翌期の予測精度に影響していることも明らかとなった. 利益予測情報の株式市場における情報効果に関する分析では,利益予測公表により生じた新情報である予測修正情報(リビジョン)に対し株価の有意な反応を検出し,コンセンサス利益予測による情報効果を確認した.リスク調整済み超過収益率においても有意な反応を検出したこと,リビジョンの方向とその程度によって超過収益率の大きさに差が存在すること等を発見した.
|