研究概要 |
3次曲面のNeron-Severi群によるE_6型ルート格子の構成を高次元に一般化して,標数2の体上定義された3次の超特異Fermat超曲面を利用し,高い充填密度をもつことが予想される格子の系列を発見した.4次元Fermat超曲面の場合には,階数22の圧着格子が得られる.この事実からConwayによる同型PSU_6(2)〓・222の明快な幾何学的説明が得られる.また,6次元Fermat超曲面の場合に得られる階数86の格子に対しては,最短ノルムと最短ベクトルの個数を決定した.Sloane-Nebeのデータベースによれば,これは現在までに構成された階数86の格子のなかでもっとも充填密度が高い.この格子のグラム行列を計算し,上記のデータベースに登録した(http://www.research.att.com/njas/lattices/index.html).一般次元の場合にも,最短ノルムと最短ベクトルの個数に対して予想を立てた.この予想を,3次の超特異Fermat超曲面の幾何学を用いて証明することが,今後の課題として残った. また,格子理論とTorelliの定理を組み合わせて,複素数体上の楕円曲面の特異ファイバーの組み合わせと,Mordell-Weil群のねじれ部分群をすべて決定した.ねじれ部分群を固定したときに現れる特異ファイバーの組み合わせを,Dynkin図形の変換規則を用いて記述することに成功した.この特異ファイバーの組み合わせのリストを用いて,ADE-特異点のみをもつK3曲面の非特異な部分の位相的基本群に関するいくつかの知見を得た.
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