研究概要 |
1.有限単純群の素数グラフが非連結であるとき素数グラフの素数2を含まない連結成分は完全グラフであるということが鈴木通夫氏により分類定理を用いずに示されている。この定理は分類定理を用いてWilliamsにより示された定理の弱い形である。鈴木氏の証明はFeit-Thompsonの定理という群論の中でも特に重要な定理の証明がうまく用いられている。鈴木氏の証明では前半の局所部分群の構造を調べる上でFeit-Thompsonの定理の別証明の一部が書かれているBender-Glaubermanの方法を用いて示され後半はFeit-Thompsonの定理の原論文の方法を用いている。2000年にPeterfalviによりFeit-Thompsonの定理の後半部分の別証明が書かれた本が出版された。Peterfalviの方法も鈴木氏の定理に適用できるのではないかと考え、実際次の結果を得た。 (1)鈴木氏の定理の後半部の証明にPeterfalviの方法を適当な修正を加えて適用することが出来る。 (2)有限単純群の素数位数が非連結であるとき非連結成分をなすどの素数pについてもそのシローp部分群はTI部分群である。 特に(2)は鈴木氏の定理から得られることがわかった。この結果については2000年8月の九州大学における"第45回代数学シンポジウム"にて一部を発表した。 2.個々の群の構造を調べるという問題意識の上で、古典群、特にGu(n,p^e)への位数pの巡回群からの準同型写像の個数についての母関数及びSp(2n,2^e)への位数2の巡回群からの準同型写像の個数についての母関数を具体的に求めた。また、GU(n,p^e)の母関数はGL(n,p^e)のときと同様にRogers-Ramanujan恒等式と密接な関係があることがわかった(室蘭工業大学竹ヶ原裕元氏との共同研究)。この結果の一部は熊本大学談話会で発表した。
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