研究概要 |
滑らかな多様体上の統計構造とは,ねじれのないアファイン接続と擬リーマン計量の組でコダッチ方程式をみたすもののことである.甘利などにより提唱されている情報幾何学,統計学の微分幾何学的解釈に重要な役割を果たしたことに,この名前は由来する.一方,アファインはめ込みが与えられると,定義域の多様体に自然に統計構造が誘導される.本研究では,アファインはめ込みの幾何学的な性質と統計構造の性質の関係を調べ,つぎの結果を得た: (1)単連結な多様体上に統計構造が与えられているとき,それが余次元1の極小アファインはめ込みによって誘導されるための必要十分条件は,統計構造が(ア)双対射影平坦であること,(イ)擬リーマン計量から定まる体積要素がアファイン接続に関して平行であること,(ウ)統計構造のスカラー曲率が恒等的に消えていること,をみたすことである. この結果は,ユークリッド空間内の極小曲面論でよく知られているリッチ・カーバストロの定理(極小曲面の内在的な特徴づけ)のアファイン幾何学・情報幾何学版と解釈することが可能である. (2)同様な問題を,余次元2の極小中心アファインはめ込みについて考察した.すなわち,単連結な多様体上に統計構造が与えられているとき,それが余次元2の極小中心アファインはめ込みによって誘導されるための必要十分条件を書きくだした.
|