研究代表者は、本年度の研究に於いて、ゲージ理論の4次元トポロジーへの応用に関する考察を行った。その中で、古田氏によって定義されたホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量が、ある特別なスピン4次元多様体の場合に、そのコホモロジー環のみによって決まることがわかった。それにより、4次元多様体の交叉形式、曲面の埋め込みに関する制限を引き出した。以下に具体的な結果を述べる。これらは古田幹雄氏(東京大学)、松江広文氏(成城大学)、南範彦氏(名古屋工大)との共同研究である。 1.K3_<K3>K3とコホモロジー環が同型であるスピン多様体のスピン構造に対するホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量が非自明であることがわかった。これにより、交叉形式の正の固有値が8より小さい場合に11/8予想が正しいことが従う。また、これらに埋め込まれた曲面の種数に関するある随伴不等式が成立することもわかる。 2.更に、K3_<K3>T^4とコホモロジー環が同型であるスピン多様体のスピン構造に対するホモトピー論的サイバーグ・ウィッテン不変量が、非自明であることもわかった。これにより、交叉形式の正の固有値が5より小さい場合に11/8予想より強い不等式が得られた。この現象はこれまでには知られていなかったものと思われる。また、随伴不等式が同様に成立することもわかる。
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