研究概要 |
本研究においては,3次元双曲型空間内の平均曲率一定曲面,およびある種の非コンパクト型対称空間の曲面でその一般化にあたるものを主に研究した.3次元双曲型空間内の平均曲率一定曲面を与えるために,リーマン面のスピン構造に着目して得られる方程式が無限次元のハミルトン系であることを示し,その中でもとくに平均曲率一定な回転面,らせん面を記述する方程式はそれぞれ2次元,4次元の有限次元完全積分可能なハミルトン系であることを示した.その応用として,計算機を使い,平均曲率一定な回転面,らせん面のグラフィクスを与え,視覚的に曲面の形を明らかにした.また,平均曲率が一定値1のときは,正則な微分形式とその積分で曲面が書き表されることがよく知られているが,積分を使わない公式も存在する.その公式の初等的な証明を与えることができた.3次元双曲型空間をモデルとしたある種の非コンパクト型対称空間内の曲面にたいしては,ガウス写像を定義しそれが複素射影空間への正則写像となるような曲面について研究した.これらは,ユークリッド空間の極小曲面の一般化とも解釈することができ,微分幾何的に重要な曲面と言える.これらについては,双曲型空間の平均曲率が一定値1の曲面にほぼ同等の性質を持っていることを解明することができた.また,その曲面にたいするフレネ方程式の可積分条件のゲージ理論的解釈についても調べた. 一方,高次元のユークリッド空間の完備極小曲面とその全曲率に関する研究も行った.ワイアシュトラスの表現公式を一般化した公式を応用することにより,いくつかの新しい完備極小曲面を構成した.これらは,よく知られたエネッパーの曲面,カテノイド,トライノイドの一般化と言える.また,全曲率に関するチャーン・オッサーマンの不等式,江尻の不等式に関連して,カテノイドの特徴づけ定理をひとつ証明した.
|