研究概要 |
1.高レイノルズ数への適用 Navier-Stokes方程式では,流体の粘性を規定するパラメータであるレイノルズ数が高くなるほど非線形項が支配的となり,より近似性の高い離散空間を設定しない限り計算が不安定になることが知られている.この問題点を回避するため,問題を残差引き戻しの形式に変換する手法を開発した.また,変換にともない生じる無限次元の誤差は線形化問題を事後的に評価することで定量的に可能であることを明らかにした.さらに線形化問題の誤差評価を用いた近似解の反復改良についての理論的検討を加え,数値実験により収束性を確認した. 2.Rayleigh-Benard対流に対する解の存在検証 解曲線が複雑な分岐を生じることが予測されている熱対流問題に対し,分岐点における特異性の回避,分岐点自身の存在検証,分岐曲線の追跡などについてこれまでの数値的検証法が拡張可能であることを理論的に明らかにした.具体的な問題として滑り境界条件を付加したRayleigh-Benard対流に対する分岐解に対する精度保証付き数値計算法を試み,これまで解析的に存在が証明されていなかった自明な解からの第一分岐解の大域的解の存在および第二分岐解の存在を検証することに成功した. 3.今後は,より高いレイノルズ数に対する検証法の適用,大規模数値計算に適応したアルゴリズムの高速化・並列化の検討を行う予定である.
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