研究概要 |
太陽系近傍の分子ガス総量を観測的に求める目的で、高銀緯分子雲の観測を行なったので報告する。 観測および新たに得られた知見 本年度は、チリ共和国ラスカンパナス天文台内に設置されている名古屋大学「なんてん」電波望遠鏡を用いて、昨年度高銀緯分子雲が多数検出された「おおいぬ座」領域などに対する詳細な観測を行なった。本年度の観測の目的は分子雲の詳細な分布および正確な物理量を調べる点にあるため、一酸化炭素分子の回転遷移に伴なう電波(^<12>CO(J=1-0),^<13>CO(J=1-0),C^<18>O(J=1-0))を用いて観測を行なった。観測領域は、銀経230度〜245度、銀緯-6度〜-20度の領域内において昨年度高銀緯分子雲が検出された領域である。^<12>CO,^<13>CO,C^<18>Oの観測点数は、それぞれ4,000点、1,500点、100点である。 本研究によって得られた知見は以下の通りである。 1.銀経190〜250度、銀緯-5〜-40度の領域、合計2,000平方度の天空に対する観測から、分子雲の個数密度は、銀緯-10度〜-40度の領域において、1平方度あたり0.02個程度である事が分かった。 2.詳細な観測の結果17個の分子雲が検出され、分子雲の平均質量は600太陽質量であった。 3.上記の結果から、太陽系近傍の分子ガス総量は50万太陽質量程度と推定される。 また、高銀緯に位置するにも関わらず、太陽系からの距離が1kpc程度と典型的な高銀緯分子雲(〜100pc)に比べて特異な特徴を持つ分子雲が複数個検出された。
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