本研究によって、ホウ炭化物超伝導体が非常に異方的な超伝導ギャップをもつs波超伝導体であることが始めて明らかになった。さらに、この異方的なギャップが非磁性不純物によって等方的なギャップへと変化することを明らかにした。また異方的ギャップをもつd波超伝導体における不純物効果とも対比、検討を行った。 超伝導ギャップの異方性を調べるために、磁束渦糸に伴った準粒子励起を磁場中比熱測定によって観測した。ホウ炭化物超伝導体YNi_2B_2Cでは温度のべき乗に依存した電子比熱・磁場の平方根に依存した準粒子比熱から超伝導ギャップがフェルミ面上のある部分で消失あるいは非常に小さくなっていることが示唆された。非磁性不純物(Pt)を添加しdirty極限に近づけていくと、電子比熱は指数関数的な温度依存性へ準粒子比熱は磁場に比例した振る舞いへと変化し、超伝導ギャップが不純物散乱によって等方的なものに変化したことが示された。さらに、高電子分光実験を東京大学物性研究所のグループと共同で進め、YNi_2B_2Cにおける超伝導ギャップの異方性を直接観察することにも成功した。 La_<2-x>Sr_xCuO_4(x=0.19)においても同様に異方的な超伝導ギャップの存在が確認できたが、非磁性不純物(Zn)の効果はホウ炭化物におけるそれとは対照的で、Znの添加によって温度に比例した項が現れ磁場依存性もH^*log(H)となった。このことは、d波超伝導体では非磁性不純物による散乱で強い対破壊がおこりギャップ内に有限な状態密度が形成されることを意味する。一方YNi2B2Cは異方的s波超伝導体で、非磁性不純物による散乱は(対破壊をおこさず)ギャップの異方性を平均化しフェルミ面全体にわたって等方的なギャップが開くことになる。
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