研究概要 |
負の誘電異方性を持つ液晶にある閾値以上の電圧を印加すると、電気流体力学的対流(EHC)が発生する。EHCには電場及び配向条件により様々な種類がある。本年度は先ず水平配向セルにおけるDynamic Scattering Mode(DSM)と呼ばれる乱流の時空揺らぎの解析を行った。DSMにはDSM1,DSM2の二種類が存在し,電圧の変化に応じて一次転移する。本研究では、対流パターンの映像をコンピュータに取り込み,各時刻の画像のフーリエ係数を計算し,特定の二方向の波数でのフーリエ係数の時間変化を抽出し,そのモードの時間相関関数を測定した。実験では,ラビング方向とその垂直方向の波数のフーリエ係数の時間相関関数を測定した。相関関数は,全ての電圧及び波数で単調な減衰を示したが,単純な緩和型ではなかった。相関関数が1/eに減衰する時間を相関時間(緩和時間)と定義し,緩和時間の波数依存性を求めたところ,DSM1では両方向ともに液晶セルの厚さに対応する波数付近に特徴的なピークが存在することが分かった。このピークは電圧の増加とともに高波数側にシフトすると同時に減少し,DSM2に転移するとピークは消失することがわかった。また,DSM1では相関時間に空間的な異方性があり,DSM2に転移するとこの異方性は無くなることがわかった。 次に,垂直配向セルでのソフトモード乱流(SMT)での揺らぎの解析に着手した。垂直配向セルでは、閾値電圧以下でフレデリクス転移が起きてゴールドストーンモードが発生し、閾値電圧直上で時空揺らぎを伴う対流(SMT)が発生する。セルに磁場を印加すると、このゴールドストーンモードが抑えられる。従って、磁場の強さを変えながらSMTの揺らぎの解析を行う必要がある。本年度は、次年度での実験のために、電磁石(購入設備)に顕微鏡を組み込んだ磁場顕微鏡システムを構築した。
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