研究概要 |
今年度新たに得られた研究成果としては,まず,2次元希釈反強磁性ハイゼンベルクモデルにおいて,臨界的なボンド密度がちょうどパーコレション点移転と一致すること,および,スピンの長さによって,臨界現象が定性的に変化しうることが分かったことがあげられる.また,ランダムネスが系の臨界現象に及ぼす影響については古典系に関してもまだ知られていないことが多いが,我々は昨年度に引続き,2次元エドワーズ=アンダーソンモデルの絶対零度における臨界現象を数値計算によって調べた.その結果,前年度の主な研究結果である低エネルギー励起のフラクタル性をさらに確認する証拠が得られた.この知見は,関連する低次元ランダム磁性体の臨界現象研究に大きなインパクトを持つものと考えられる.また,我々は2次元ランダム横磁場イジングモデルの絶対零度における量子相転移について,昨年度のモンテカルロ法による計算にひき続いて,今年度は実空間繰り込み群によるアプローチを試みた.このモデルは異常に遅い緩和を示す可能性のあるモデルとして,一般のスピングラス系やエイジングなどの現象とも深く関連している.研究の結果,相関関数の特異的な振る舞い,とくに典型的な振る舞いと平均的な振る舞いが異なるというグリフィスマッコイ異常性を観測した.また,1次元では漸近的に厳密であると言われる実空間繰り込みが2次元異常でも臨界現象の妥当な取扱になっていることを示唆する結果おも得た.以上の結果から,2次元ランダム横磁場イジングモデルの量子臨界現象は1次元のそれと似通っており,フィッシャーが実空間繰り込みの考え方に基づいて1次元系に対して展開した描像が実はかなり広範囲の現象を記述しているという主張をより強固なものにした.
|