研究概要 |
(1)液体^3He中でのアルカリ土類原子のスペクトルの測定 Ca原子4s^<21>S_0-4s4p^1P_1,4s4p^3P_J-4s5s^3S_1遷移について、液体^3He中と^4He中での励起スペクトル、発光スペクトルを測定しその解析を行った。どちらの遷移でも^3He中ではHe中に比べて、スペクトル線幅及び真空中での遷移周波数からのピーク位置のシフトの量がともに非常に大きくなっている。特に主量子数が変化する遷移の励起スペクトルでは^4He中ではシフトが+1900cm^<-1>であるのに対して^3He中では+1200cm^<-1>であり大きな違いがある。これらのスペクトルを説明するために、液体He中では原子が価電子間のパウリの排他律による斥力によりバブルを形成し、そのバブル表面が球対称(breathing)、双極子、四重極子…型の振動をすると仮定するバブルモデルを導入した。このモデルによる解析により、^4Heと^3Heでの差異は分子振動論での換算質量の違いを反映した所謂同位体効果に起因するのではなく、原子量の小さいHeでは液体状態での数密度は物質波の広がりによって決まっており^3Heと^4Heでは数密度が1:1.4となっていること、及び、^3Heはフェルミオン、^4Heはボゾンであり統計性の違いによりその液体の表面張力が大きく異なっていることがスペクトルの違いの原因であることが示された。すなわち液体^3He、^4He中での原子のスペクトルには両液体の量子液体、量子統計性の違いが顕著に現れていることが分かった。 同様に他のアルカリ土類原子Mg,Sr,Baについても液体^3He,^4He中でのスペクトルの測定ができている。特に、Mgではその発光スペクトルでは液体He同位体間での傾向が他の原子とは異なっており、これは励起状態ではMg^*He_nのようなエキサイプレックスを形成しているために分子振動論での同位体効果が現れている考えられる。
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