研究概要 |
本研究では、防災科学技術研究所のK-NET等の合計7観測点における強震動記録を用いて,1998年9月3日岩手県内陸北部の地震(M6.1)のエンベロープインバージョン解析を行い、断層面上の高周波(2-16Hz)地震波エネルギー輻射量分布を推定した。その際、破壊開始点の深さは3kmとし、震源メカニズム解,余震分布,GPS等の地殻変動データを参考に10km×10kmの断層面を設定した。断層面は北西側に向かって41°傾斜している。この断層面を2km四方の25個の小断層に分割した.各小断層には,同一の震源メカニズム解をもつ点震源を配置し,そのエネルギー輻射量を推定した。エンベロープグリーン関数はエネルギー輸送理論を用いて解析的に計算される.その際,この地域の小地震の解析により独自に求めた散乱・減衰パラメタを使用している.インバージョン解析の結果、破壊伝播速度はS波速度の0.7倍,各小断層のエネルギー輻射継続時間は1.24秒と推定された。また、断層面の深い部分から地震波エネルギーが強く輻射されたことが明らかになった。総エネルギー輻射量は2-16Hzにおいて7.0x10^<12>Jとなった。前年度に行った低周波(0.1-0.33Hz)波形インバージョンによる断層面上のすべり量分布と比較すると,モーメント解放量が大きい領域の深い端の部分から高周波地震波エネルギーが強く輻射されたことが明らかになった.このことから,この地震では破壊の停止に伴なって高周波が強く輻射されたものと考えられる.以上のように,本研究では,低周波の地震波と高周波の地震波エンベロープを用いたインバージョン解析を行い,より広帯域にわたって地震の断層破壊過程を明らかにすることができた.
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